平成18年に大時化が発生。
養殖していたホタテの稚貝資源が失われた。
漁業協同組合から西村組へ連絡が入った。
「ホタテを守りたい。力を貸してください」
80年以上ものあいだ、
漁業関係者と二人三脚で海を守ってきた西村組。
断る理由などあるはずがなかった。
浅い海域ほどホタテの中間育成施設は時化の影響を強く受けます。平成18年の大時化の被害を受けた際は水深50メートルよりも浅い海域にあったため、今後に備えてさらに深い海域に移動させたいとの依頼を受けました。そのために必要なアンカーブロックの撤去には安全面や経済性のリスクが伴うため、まずはそのアンカーブロックを安全かつ効率的に撤去する工法の開発が必須となったのです。
従来の魚礁ブロックの撤去工法は潜水士による玉掛け作業でした。しかし今回撤去する魚礁ブロックの沈設水深が50メートル程度と深く、潜水士による作業は非効率的かつ身体的リスクが伴うものでした。そこで大水深の魚礁ブロックでも掴み上げることができる専用のバケットを独自で開発し、前例のない、水深約50メートルでの効率的な大水深ブロック撤去工法を実現したのです。
独自の大水深ブロック撤去工法にも開発当初は問題点がありました。魚礁ブロックを正確に掴めているのかどうか、バケットを引き上げるまで分からなかったのです。そこでバケットの上部に水中カメラを設置。カメラの映像を見ながら作業することで確実に魚礁ブロックを掴めるようになり、撤去工法の精度をさらに高めることができました。
時化によるホタテ稚貝資源の減耗被害を低減することができ、
ホタテの生産量を安定させることができました。
引き上げたブロックにコンクリートを打ち足して再利用できる体制を整えたことで、養殖事業の一層の安定化が実現しました。
ブロックを再利用する際、嵩上げして重量を増加させ、一施設あたりの生産性を向上させました。また水産関係者に貢献したとして、国土技術開発賞の初代地域貢献技術賞を受賞しました。