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ある先輩社員から「10伝えたら11、12までやってくれる。本当に頼もしい」と信頼を寄せられている。それに対して「他人に言われるのがイヤだから先回りしてるだけですよ」とさらり......。謙虚で寡黙な男だが、元ホタテ漁師という経歴から漁業への熱い想いを胸に秘めている。「アイスブームがないと、困る人がいますからね」期待の若手職長として、西村組の主力事業をけん引している。
ある先輩社員から「10伝えたら11、12までやってくれる。
本当に頼もしい」と信頼を寄せられている。
それに対して「他人に言われるのがイヤだから先回りしてるだけですよ」とさらり......。
謙虚で寡黙な男だが、元ホタテ漁師という経歴から漁業への熱い想いを胸に秘めている。
「アイスブームがないと、困る人がいますからね」
期待の若手職長として、西村組の主力事業をけん引している。
昭和49年1月。サロマ湖の湖口から大量の流氷が流入し、ホタテやカキなどの養殖施設が被害に遭った。損害額はなんと20億円超......。北海道の名産品であり、経済の一翼を担う貴重な資源が失われたことを受けて、西村組は動いた。関係諸官庁等が立ち上げた官民連携の委員会に参画。流氷の湖内流入を防ぐ施設の開発プロジェクトに加わったのだった。
防波堤のような壁をつくってしまうと、漁船の出入りがスムーズにできなくなるほか、サロマ湖の塩分濃度が保てなくなる懸念があった。そこで発案されたのが、流氷が去ったあとに一時撤去できる浮遊体の防氷施設「アイスブーム」だ。同様の前例はカナダにある河川での一例のみ。海洋の前例はない。平成6年。世界初の挑戦となる官民共同研究がはじまった。
潮流・風力・氷圧力に対する耐久力の再現や利便性の追求など前例のない工事は困難を極めたが、一線級の技術者が知恵を絞り、力を結集した結果、平成10年に完成を迎えた。世界初、流氷制御のための海洋構造物誕生の瞬間だった。平成13年には2つ目のアイスブームがサロマ湖第2湖口地区に完成し、のちに能取湖にも設置された。現在は流氷が去る毎年4月にメンテナンス工事を行なっている。
サロマ湖第1湖口地区の最初のアイスブームが完成した平成10年以降、流氷による養殖施設の被害は報告されていない。20億円を超えたあの損失を取り戻すことはできないが、決して繰り返さないという決意を結果で示すことができている。また、アイスブーム誕生前は漁業関係者が流氷を砕いていたが、その労力を本業にあててもらえるようになった。経済的なリスクの軽減だけではなく、生産性の向上にも貢献することができた。
流氷が湖内に入ってくると、ホタテ稚貝の養殖のために海に垂らしているロープが切られてしまいます。そうなるともう、ぶらさがっていたホタテ稚貝は回収できません。だから、流氷の季節になったらユンボを載せた船で氷を砕きにいっていたんです。これが本当に大変で......。30人で一斉に作業しても丸1日かかっていましたから。その作業がアイスブームのおかげで必要なくなったんです。しかも、養殖施設が被害を受ける心配もなくなりましたから。感謝しかありませんよ。
地元漁師 佐藤智さん