スクロールすんべ
同じ夢を見る同僚
出会いに生きる 其の弐
俺には夢を語り合える
仲間がいる
そりゃあ、いつだって一匹狼は憧れる。映画やドラマのヒーローみたいに孤軍奮闘、強敵を打ちのめす姿は胸がスカッとする、うん。だけど、本気でこの世界を変えるには仲間が必要だ。時に強力な援護射撃を放ち、時に外れたルートを整え直す。そんな仲間がいるから、進んでいける。仲間に恵まれなければ、どれほど志の高い政治家もこの国を変えられない。イエスマンばかりを揃えた裸の王様は、どうなった?そう、リーダーにこそ、頼れる仲間が必要だ。
初対面から格好良かったんだ
「格好良い……」。それが工事部主任、西村組の若きホープである鈴木純平と入社式後の懇親会で初対面した時に、西村幸志郎が抱いた感想だった。
甘いマスクに、低音の効いたハリのある声、柔らかな物腰、そして周囲を常に気に掛ける繊細さ。イメージしていた海の男とは違うそのすべてに、幸志郎の興味がそそられた。ふたりの距離が近くなったのは、そのさらに二年後のこと。
幸志郎が最初の赴任地であるサロマ湖から本社に戻ってきた頃だった。当時、幸志郎と鈴木のデスクは背中合わせに配置されていた。元が歳の近いふたりである。互いに打ち解け合うまでに、時間は掛からなかった。
同僚から見る幸志郎という男
対する鈴木の幸志郎への印象はどうだっただろうか。 西村組には毎年幾人もの新入社員が入ってくる。当然、元気な者、真面目な者、明るい者、いろいろな個性を持った若者がいる。しかし、幸志郎はそのどのタイプでもなかったと鈴木は振り返る。
鈴木「とにかく初日からギラギラしていた。何かを変えてやろうという迫力がありました」
そしてその印象は二年の時を経て、確信へと変わっていった。
鈴木「知れば知るほど、その行動力、チャレンジする姿勢が凄い。自分は動く前に割と悩んでしまうタイプなんで、年下だけど憧れるところではあります」
馬鹿みたいに熱い思いをぶつけ合ったこともある
今、ふたりには夢がある。それは、この西村組を若い社員たちが今よりもっと面白く働ける場所に変えていくことだ。
幸志郎「純平さんはね、俺とは違うものを持ってる。俺はあそこに行くんだってゴールを示すのが得意。純平さんは、周りと上手く協力しながら、そこに行くまでの道を作ることができる。ずっと隣にいて欲しいって思ってるんだ」
そう語る幸志郎の隣で、鈴木は優しく微笑んだ。
鈴木「現場のことは、僕の方がわかってる。だからそこで役に立てることはたくさんあると思う。幸志郎君は、西村組を面白くする、その思いをブラさずに突き進んで欲しい」
馬鹿みたいに熱い思いをぶつけ合ったこともある。朝が来るまで笑い合ったこともある。幸志郎が西村組に持ち込んだ火種は今、鈴木という盟友を得て確かに大きくなっている。